日本で最も美しい村

結果発表

後世に残したい風景を
たくさんご応募いただき
ありがとうございました。
厳正な審査の結果、
入賞が決定いたしました。

「日本で最も美しい村」連合は、
小さくても素晴らしい地域資源や、
美しい景観を持つ村の存続、それぞれの村が
自立を目指すための運動をしています。
失ったら二度と取り戻せない
日本の農山漁村の景観と文化。
日本の原風景。
あなたの写真の力で、
後世に残しませんか。

主催:NPO法人「日本で最も美しい村」連合
主管:一般社団法人 日本フォトコンテスト協会
後援:カメラのキタムラ

審査員・選評:写真家 吉村和敏

入賞作品

グランプリ

日本で最も美しい星野村「冬景色」
白石幸一
撮影地:福岡県八女市星野村
選評
うっすらと雪化粧した星野村の全景をとらえた風景作品です。夕暮れ時の淡い光につつまれた、この日この時間帯にしか見ることができない貴重な「美」を、一枚の作品に置き換えることに成功しています。山に囲まれた小さな村ですが、不思議と作品から無限の広がりを感じます。清らかな雲が流れる空のキャンバスに、やがて輝き出す満天の星の輝きを想像できるからでしょうか。この作品と接した誰もが、星野村を訪れてみたい、こんな地で暮らしてみたいと夢を抱くことでしょう。実はこの作品はドローンに搭載された小型カメラによって生み出されています。しかし、フルサイズのカメラで撮影した以上の高いクオリティを持ち、銀塩プリントの美しさにも目を見張りました。白石さんがこの一枚に込めた想い、そして村への愛情がストレートに伝わってくる素晴らしい作品です。

特賞

  • 木造校舎と大銀杏
    大島市郎
    撮影地:福島県昭和村
    選評
    昭和村に残る木造校舎はとても目を引く被写体です。今回も外観や内観をテーマにした作品が数多く集まりましたが、その中で最も印象に残ったのがこの一枚です。鮮やかに色づいた銀杏の木で季節感を演出し、記念写真を撮るカップルを点景で入れることで今という時代をストレートに伝えています。若者たちの間では、昭和という時代がちょっとしたブームになっているとか。日本の田舎の小さな村には、古き良き時代を感じる景観がまだたくさん残されている。そんな当たり前のことを、この作品は教えてくれます。
  • 仕事のあと
    中川薫
    撮影場所:宮崎県椎葉村
    選評
    一日の仕事を終えホッと一息ついたお爺さんをとらえたスナップショットです。田んぼや空の広がりを強調した大胆な構図から、秋の季節感や空気感を感じることができます。何より素晴らしいのは、お爺さんの穏やかな表情です。日々の暮らしの中で感じる小さな幸せ、この地で生きることの喜びが垣間見えます。きっと心の中には幾つもの素敵な物語があるのでしょう。お爺さんの横に座り、思い出話に耳を傾けてみたい衝動に駆られました。何かの雑誌の表紙を飾ってもおかしくない上質な作品に仕上がっています。

入選

  • 村一番の人気者
    渡部久恵
    撮影場所:栃木県那珂川町小砂
    選評
    名須川町小砂の片田舎で暮らすお婆ちゃんをとらえたスナップ写真です。秋の柔らかな光を巧みにコントロールし、背後にトウモロコシをぼかして入れるという演出が見事です。撮影者とお婆ちゃんとの信頼関係があるからこそ、このような素晴らしい表情を引き出すことができたのでしょう。村の豊かさは、まず住んでいる人たちの表情に現れます。どの「最も美しい村」も自然の風景に注目が集まりますが、「美しさ」の根源は、村人たちに隠されているような気がしてきました。
  • 歴史を語る
    宮田敏幸
    撮影場所:鳥取県智頭町
    選評
    美しい瓦屋根を持つ日本家屋を、屋内から丁寧にとらえています。窓枠が額縁の役割を果たし、まるで美術館に飾られた絵画のような作品に仕上がりました。「歴史を語る」というタイトルも素晴らしいです。この作品を観る側は、「語る」という言葉から、建物と樹木の共存を意識するでしょう。あえて紅葉がピークの時期にこの場所に足を運んでシャッターを切った宮田さんの拘りが、この一枚から伝わってきました。何時間も鑑賞していたくなるような不思議な力を秘めた作品です。
  • 秋に遊ぶ
    鈴木耕二郎
    撮影場所:青森県西目屋村
    選評
    作品には北国の美しい秋の表情が凝縮されています。まずは、山、湖、森、枯れ木を均等に配置した安定感のある構図に目を見張りました。一見すると、このダム湖は人を寄せ付けないような山奥の秘境にある印象を受けますが、右下に写る二艇のカヌーが、現実世界へと引き戻してくれます。西目屋村で暮らす人たちは、思い立ったときにすぐにこの場所へ行くことができるのかもしれません。写真愛好家なら、誰もが写真を撮りたくなる光景です。いつの日か村の新たな名所になっているでしょう。
  • 上から目線
    鈴木康子
    撮影場所:沖縄県多良間村
    選評
    都会では車のオーナーが目くじらを立てて怒るようなこんな出来事も、村ではよくあること、誰一人として気にしないのかもしれません。多良間村を訪れる観光客は、碧く美しい海に感動し、たくさんの思い出を持ち帰ることでしょう。しかし、散策の途中で見掛けたこんなハプニングも、永遠に心の中に刻み込まれるものです。一瞬を記録する写真の大切さを改めて思い知らされました。沖縄で暮らしながらも、旅人の目線になってユニークな作品を生み出してくれた鈴木さんには敬意を表したいと思います。
  • 一番列車
    島貫一郎
    撮影場所:山形県飯豊町
    選評
    朝のホームにゆっくりと近づいてくる一番列車。乗客は三人だけ。明日も、そして明後日も、変わりのない日常が繰り返されていく。しかし季節は確実に流れ、雪国に桜の花咲く春が訪れる……。そんな二つの世界を見事に描き出しているのがこの作品です。ホームという一つの舞台が、鮮やかな草の緑と淡い朝靄に包まれています。近づいてくる列車を絶妙なタイミングでとらえることにより、童話のような世界観を生み出すことができました。

ロマンティック賞

  • 黄金色に輝くススキ原野
    堀内勇
    撮影場所:奈良県曽爾村
    選評
    夕陽に照らされたススキの穂が、まるで会話でも楽しむかのように風に揺れています。自由が妨げられた厳しい環境の中にいると、やはりこのような大自然の中に行き、光や色を全身で受けとめてみたくなります。いまの日本人の心の内がストレートに作品に反映されていると思いました。「最も美しい村」のフォトコンテストでは、自然風景をテーマにした作品はなかなか注目されませんが、今年に限ってあえて選んでみました。
  • 夕陽に向って
    山台雄三
    撮影場所:愛媛県上島町
    選評
    オレンジ色に染まる静かな海原に、郷愁というストーリーを刻むかのように、一隻の船が移動していきます。船にはどんな人たちが乗っているのでしょうか。まるで映画のエンディングのようなシーンに心打たれました。海の表情は多様に変化します。地元の人しか知らないような特別な美しさを、一枚の作品として残してくれたことが嬉しくなりました。
  • 蛍火の棚田
    高橋俊二
    撮影場所:山形県大蔵村
    選評
    「天まで続くような壮大で荘厳な風景」と称される四ヶ村の棚田です。ほたる火が灯るコンサートの日にとらえているからでしょうか、青く神秘的な色彩と相まって、幻想的な雰囲気を醸し出すことに成功しています。この作品を見つめていると、棚田全体に響き渡るコンサートの音色が聞こえてくるようです。光と音、そして村人たちの絆までが表現された素晴らしい作品です。
  • 水のカーテン
    大塚喜広
    撮影場所:長野県高山村
    選評
    高山村が誇る雷滝は、滝の裏側を歩いて行くことができます。滝を潜った直後、その優美な水の姿に心打たれ、三脚にカメラを据えて写真を撮ったのでしょう。天から絹の羽衣が舞い降りたような、ロマンティックな作品に仕上がりました。左下には、滝を見上げる2人が写っています。同じ場所に行って滝を眺めてみたい、そして写真を撮ってみたいと思わせるところも、この作品の魅力になっています。

総評

「日本で最も美しい村フォトコンテスト2021」は、新たに「ロマンチックな村」というテーマが加わり、合計9つのテーマで作品の募集が行われました。今年からプリント作品のみになりましたが、1000点を超える力作が集まり、審査会場となった都内の会議室はカラフルな写真で埋めつくされました。
長引くコロナ禍の影響でしょう、祭りをはじめとする村行事の作品は極端に少なく、逆に、朝や夕方など人の出が少ない時間帯に撮影した風景写真が多かった気がします。時代の流れでしょうか、ドローンのカメラで生み出された作品の応募も何点かあり、今まで見たことのないような村の景観を楽しむことができました。
第一次選考は村ごとに分けた形で行われましたが、第二次選考からは村を意識することなく、作品が持つ魅力を考慮して選考していきました。
北から南まで、日本の農山漁村が持つ多様な表情と接していると、この国が育んできた風景や文化の奥深さに改めて感動させられます。また、穏やかな表情をした村人たちをとらえた作品からは、今の厳しい時代を生きる連帯感、そこから生まれる郷土愛のようなものを感じ取ることができました。
今回のフォトコンテストを通して、写真撮影を目的にした「最も美しい村」巡りを楽しんでいる人が増えていることにも気づきました。いまは村の景観や観光スポットにカメラを向けることが主体となっているようですが、もう少し幅広く村の表情を記録してもいいかもしれません。民宿の雰囲気、村内で食べた料理など、旅日記をつけるような感覚でカメラのシャッターを切れば、思ってもみなかったベストショットを生み出せるでしょう。2022年も皆さんからの力作を期待しています。
写真家・吉村和敏
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